diary

“Quem deseja ver o arco-íris, precisa aprender a gostar da chuva.” @pyi46

伊藤万理華の脳内博覧会

 

長かった前置きも終わりにして、本題へ。

最初に言っておきます。

ここからは盛大なネタバレをしていきます。

ですので、まだ見てない人は絶対に読まないでください。

もう一つ、これは保険になるのですが、僕は伊藤万理華さんがこの個展にどんな想いを込めたのかとかを全く知りません。何処かで答えてるのかもしれませんが、僕はそれを知りません。

だからこれから書くのは、本当に情報がない人間の勝手な予測です。

あらかじめご了承ください。

 

 ―――

 

個展は大きく3つのエリアに分けられていました。

左の部屋には彼女の写真が沢山飾られていました。

無邪気な笑顔はアイドル伊藤万理華を思い出させました。

印象に残ってるのは麻雀牌を指の間に挟んだ1枚。

僕の好きな麻雀をこんな所で目にするとは思いませんでした。驚きました。

 

―――

 

真ん中の部屋には犬会の写真がずらりと並び、それを1枚ずつプロジェクターで写していました。

レトロな雰囲気漂う部屋の中、濃いチークに濃い口紅を塗り、UNOや人生ゲームを楽しむ犬会メンバー。

手に持つのはダイヤル式の黒電話。

服装や化粧をみると昭和をイメージしてるのかなと感じます。

 

今の世代の子はあまりピンと来ないかもしれませんが、僕が子供の頃はカメラで撮った写真を写真屋さんに持って行って現像してもらい、それをアルバムに保存する。

過去の思い出はそうやって眺めるのが普通でした。

今撮ったばかりの写真が今すぐにどんな物なのかはわからない。半目でも、変な顔をしていても、見直して撮り直す事もない。現像して、手元に届いて、そこで初めてどんな写りだったのかがわかる。

だけどそれは逆に言えば、写真を撮った時、手元に来た時、アルバムに保存して眺める時、別々の楽しみ方が出来る。

「ピンぼけしてんじゃん」とか「うわ、変な顔」とか「こんな写真いつ撮ったの?」とか、そんな会話も出来る。

言うならば「今」と「過去」と2通りの見方が出来ます。

上手く言えませんが、その方が写真にリアリティーを感じます。動きや物語を感じます。

犬会の写真からは、それを感じました。

 

そして「アナログ」の中にある「デジタル」

バブルを彷彿とさせる化粧や服装を、バブルを知らない子達がしている。

何か不思議な感覚でした。

それは「昭和」でも「平成」でもない。

この子達は言うならば「犬会」と言う時代を生きている。そんな感じがしました。

 

―――

 

そして右の部屋では、彼女の映像を見ることが出来ました。

 

「トイ」と「はじまりか、」

 

2つのショートムービー。

 

ここからは映像を見た僕の感想になります。

あとうろ覚えだから所々間違えてると思います(保険)

 

この2つは全く別の内容で、構成も全く違う作りになってます。

だけど、僕はこの2つは繋がった一つの作品なんじゃないかなって思いました。

 

「トイ」

深夜のガソリンスタンド。

車の中で暴れる2人。

助手席の扉が開き、ドレスを着た伊藤万理華が転がるように車から放り出されて、水たまりに落ちる。

笑いながら運転席に向かって文句を言う彼女。

化粧直しの為にトイレに向かう。

運転席を見ていた時に出ていた笑顔が消える。

アキレス腱には大きな傷。

疲れた顔で鏡を見る。

蛇口を捻り水で顔を洗い、化粧が落ちた顔に赤い口紅を塗りたくる。

車の音。

外に出ると乗っていた車は走り去り、自分のバッグはアイスクリームでべちゃべちゃに汚されていた。

 

 

僕は、これは“アイドル伊藤万理華の物語”なんじゃないのかなと思いました。

 

アイドルとして華々しくデビューを飾ったつもりでいたけど、現実はそんな甘い物じゃなかった。

選抜にも入れず、辛い日々が続いた。

車からは放り出され、着飾ったドレスは汚された。

 

それでも表向きは笑顔でいなければいけない。

放り出した運転手にも笑顔で答える。

 

特技のバレエも、自分を助けてはくれない。

切れたアキレス腱。

 

どうすればいいのかわからずに、自分を取り繕って過ごす日々。

厚く塗りたくった口紅。

 

本当の自分がわからない。

汚されたバッグ。

 

 

「トイ」
トイとは玩具と言う意味です。
この映像に出てくるトイは、彼女自身を言ってるのかなと思いました。
遊ばれ、ボロボロにされ、捨てられて。

 

このタイトルにはアイドルをやってきて感じた想い、皮肉も含まれているのかなって。

 

 

そして。

ここから彼女はバレエを踊り始めます。

一心不乱に踊り、気がつくと夜があけ、綺麗な朝焼けを見ながら一筋の涙を零します。

 

アイドルとしての自分を模索し、葛藤し、答えを見つけた。

それは取り繕わず、自分自身を出していくということ。

その答えが見えた時に、自分の未来が開けた。

 

 

「トイ」

トイは「問い」とも読めます。

自分への問いかけ、そして答えを出す事が出来た。

 

そんな意味なのかなって。

 

 

雨の夜から始まって、最後は綺麗な朝焼けとそれを見ながら涙を流す彼女の横顔がとても印象的でした。

きっと、アイドルとして辛い事苦しい事もあっただろうけど、最終的には自分を見つけることが出来て前向きな卒業をする事が出来たって事なのかなって。

 

これが僕の感想です。

 

 

「はじまりか、」

 

トイとはうってかわって、今度は朝方の爽やかな彼女の笑顔から始まります。

ずっと繋がった1本の映像となっていて、彼女がカメラに向かって歌いながら歩き続けます。

歌詞は自分のアイドルとしての軌跡です。

本音かどうかは分かりませんが、正直にありのままの気持ちを綴ってると感じました。

 

この曲は、メロディーと言うよりラップ調です。

彼女が「誰か」に向かって語りかけるように歌ってるように感じました。

その「誰か」は、彼女のファンです。

 

オーディションに合格して、上手くいかずに泣いた夜もあった。だけどあなたが支えてくれた。こんなアイドルっぽくない私の事をずっと見ていてくれてありがとう。

彼女がアイドルとして自分をここまで支えてくれたファンの人達への感謝の気持ちを歌っています。

 

曲の最後の方に彼女はこう言っています。

 

『もっと話したい まだまだ足りない

離れるのは寂しいけど 違う私も見てほしい

良かったらもし良かったら 一緒に来ませんか?

あなたの未来と 私の未来

どこかでまた交わることができたらいいな』

 

そして、歌の最後はこうしめてます。

 

『ここからここから 私が始まる

ここからここからここから

「はじまりか、」』

 

 

「トイ」の中で、彼女はアイドルとしてこう変わっていった、その物語を、アイドルとしての人生を表現した。

そして「はじまりか、」で、それが出来たのは「あなた」が居てくれたからだと感謝を伝えた。

 

2つの映像は別物だけど、繋がってると感じました。

 

 

そして最後に、「私のはじまりはここから」だと。

それを「良かったらあなたに見てほしい」と。

そう言ってます。

 

これこそが伊藤万理華の脳内なのかなと、僕はこの映像を見てそう感じました。

 

 

「アイドルと卒業」

僕はよくこれについて考えます。

アイドルは、応援してくれるファンがいないと成り立たない仕事だと思います。

芸能界は選ばれた人間だけが活躍出来る場所です。

その中で1人で生きてくのには力不足な子達が、ファンに支えられてなんとかやっていけてる。

卒業したらその世界に1人で飛び込まないといけない。

卒業してしまったら今まで応援してくれてた人がこの先も付いてきてくれる保証は無い。

それはきっととても不安な事なんだろうと思います。

 

だから、彼女は最後に、「トイ」の中で自分自身を全身で表現して、「はじまりか、」の中で笑顔で精一杯の感謝を伝えて、「良かったら、もし良かったら」ととても控え目に「一緒に来ませんか?」と気持ちを伝えてきた。

 

2つの作品からは、彼女の人生と、アイドルとしての物語と、未来への希望と、不安と、ファンへの感謝。

それを感じました。

 

―――

 

長くなりましたが、これが僕の「伊藤万理華の脳内博覧会」を見た感想になります。

 

一言で言うと、楽しかったです(語彙力)

読んで下さってありがとうございました。