diary

“Quem deseja ver o arco-íris, precisa aprender a gostar da chuva.” @pyi46

『やさしさとは』の歌詞と乃木坂の楽曲から創作する君と僕の物語(後編)

 

ここまで読んで下さってありがとうございます。こちら本物の後編になります。

君と僕の物語もあと少しで終わりを迎えます。もう少しだけお付き合いください。

 

 

高一の時に『失いたくないから』の中で君を好きな気持ちに気が付いて、高二の時に『君の名は希望』の中でその思いは強くなって、君に告白をしようと決意した。

 

そして舞台は高校三年生、物語は『やさしさとは』に移っていきます。

 

彼は2人が喧嘩をしたら彼女からは相談を、リクからは愚痴を、2人が仲良くやってる時はリクからはのろけを聞くようになっていました。初めて手を繋いだ時のことも、初めてキスをしたことも、彼の気持ちを知らないリクは嬉しそうに彼に話します。

彼はそんな惚気話も自分の気持ちをリクにも彼女にも悟られないようにしながらちゃんと聞いてあげていました。自分の心を保つために、「道のこっち」から。

2人が付き合い始めて1年近くたったある日。高三の夏が終わり、部活が終わりを迎える頃、リクから相談を受けます。それは進路の事でした。

リクは陸上選手として強くなるために留学を考えていました。だけど彼女は同じ大学に進むことを希望している。どうすればいいかと。

彼には相談の答えを返すことが出来ませんでした。

真剣に悩むリクの言葉を、ただ適当な相槌を打って聞いたフリをしていました。

 

部活が終わると同時に、彼女と会話することも自然と減っていきました。

彼女がいるリクを遊びに誘うことも出来ない。なんとなく距離を取ったまま、2人がどんな感じでいるのかもあまり分からないようになっていました。

 

そして迎えた高三の冬。彼はリクから「彼女と別れた」と聞きます。あの時に相談された進路が原因でした。彼はリクの言葉を聞いて、相談を受けたあの時に、もっと親身になるべきだったんじゃないかと後悔します。

そして、彼女を好きな気持ちが2人の恋を心から応援することを拒んでしまっていたことに気が付きます。

好きな子がこんなにも身近で他の人を好きでいるのを見ているのはとても辛いことだと思います。だけど彼には彼女を好きな気持ち以上に、彼女とリクへの感謝の気持ちもあった。

あったはずなのに、2人の恋を心から応援出来ていなかった。

 

「一部始終を眺めてた道のこっちで冷静すぎたことがだめだったんだ。もっと感情的に僕が走れたらそうバスの時間に間に合った」

これが、「君が腕に抱えてた紙袋が破れてラ・フランスが転がった」ことを知った時の彼の気持ちです。

 

彼の心中は、彼女を好きな気持ち、好きを伝えられてない後悔、恋を応援出来なかった罪悪感が混ざって、複雑な感情になっていました。

リクから彼女と別れたと聞いて、彼女の元に行きたい気持ちは勿論あった。泣いていたら慰めて、悲しみが癒えるまでそばにいたい。だけどとても今の感情のまま彼女に会うことは出来なかった。

そして彼はここで気づきます。ずっと抱いていた彼女への恋心も終わりを告げたことに。

彼女がリクと別れたことを聞いて、俯瞰で君と僕の関係性を考えてみた時に、彼もまた彼女に思いを伝えることは一生出来ないんだと悟りました。リクと別れたことを知って、今更彼女に好きだと伝えたとしたら、そんなに安っぽくて薄っぺらい言葉はありません。

彼女の抱えてた紙袋が破れてラ・フランスが転がった時に、彼の持つ紙袋もまた破れていたのです。しかもその紙袋の中身は空っぽなままで。

そして彼は考えます。

「声を掛けないまま君を見送るだけ、その方が僕らはしあわせなんだ」と。

「小さな後悔」は彼女とリクの恋を応援出来なかったこと。

それも「思い出すのはやめにして、孤独を選ぼう」と。

 

そうして、彼は彼女ともリクとも距離を置いて、3人は離れ離れになったまま高校を卒業していきます。

彼が探しているやさしさの答えは、道のこっちで紙袋が破けるのを見ているのではなくて、道を渡って君の近くに行って紙袋が破れないように一緒に抱えてあげることだったのかもしれません。だけどいまさらその頃には戻れない。だから彼は「答えがみつからなくて、ただ歩くしかなかった」

僕が前編でこの歌の本質は「歩くしかなかった」所にあると言った理由がこれになります。

そしてこれが僕が余白を埋めた『やさしさとは』の君と僕の物語になります。

 

 

さて。

ここからが後編です。

僕と君はこの後どうなったのか。

 

ここからは完全に妄想です(ここまでも完全に妄想ですが)。多少飛躍もしてますが、これも一つの楽しみ方だと思って読んで下さると嬉しいです。

 

『失いたくないから』の中で彼女を好きになり、『君の名は希望』の中で君に告白しようと決意した。だけど彼女に告白することなく、『やさしさとは』の中で彼女への恋は終わりを告げました。

そして数年後。彼はまだ恋を引きずっていました。

 

舞台は高二の夏にさかのぼります。

九月初旬、夏休みが終わった所で彼は彼女を花火大会に誘いました。

そこで告白をしようと決意していた。

もし、もしあの時強引にでも彼女に告白をしていたら何か違う結果が生まれていたんじゃないかと、彼は今でも考えます。

彼女の告白を聞いた後、2人は花火を見ます。

どうして花火は思い出に残るんだろう。花火は一瞬で消えてしまうものだから、消える前に胸に焼き付けようとするからなのかな。今日の記憶も、消えてしまった花火のようにいつまでも残るのかな。

隣にいる彼女の手を繋ぐことも出来ずに、彼はそんなことを考えていたのかもしれません。

 

記憶に残るのは音と匂い。一緒に思い出すのは後悔。

あの日、君からリクのことを好きだと聞いて、僕は咄嗟に「応援するよ」と嘘をついた。

優しさを勘違いして、本当の気持ちを捨てた。

遠くの方で夏の終わりを惜しむように九月の蝉が煩く鳴いていた。

もしもやり直せるならどこまで巻き戻そうか。

君と初めて出会った高一の6月か。それとも君を好きになったあの夏か。

たった一つ、君に好きと言えなかっただけで、君と僕は違う空を見ている。

 

何年経っても彼の心の中の後悔が消えないのは、彼女に告白すら出来てないからだと思います。いっそのことはっきりと振られていればこんなに引きずることもなかったかもしれない。ただあの時の彼は自分の気持ちを隠すことが君へのやさしさだと、そう勘違いした。

そう考えて、彼はいまだに彼女への気持ちを引きずっています。

 

では彼女はどうなのか。

彼女もまた、リクへの思いが残っていました。

彼をまだ好きなまま離れ離れになってしまった。

風鈴の音が聴こえた夏、繋いだ手がちょっぴり汗ばんでいたけど、嫌われないように何度も繋ぎ直した。

知らず知らず彼との思い出の場所に足を運んでしまう。

あなたになんて会えないのに。

今だって、悲しいことがある度にあなたのやさしい顔を思い出してしまう。

 

だけど彼女は彼よりも前向きです。だから自分の気持ちを整理する時に『立ち直り中』と言っています。きっとリクとの恋に後悔はないんだろうなと思います。

 

 

この後の彼女の物語がどうなったのかは分かりません。

もしかしたら大学に入った後に、もう絶対に恋なんかするもんかと決めていたのに、友人の紹介で知り合った人に気づいたら片想いをしていたのかもしれません。

その恋はひと夏の長さより思い出だけが多すぎる恋になったのかもしれないし、設定温度のように一緒に暮らす恋愛になったかもしれないし、ありがちな恋愛のような結末を迎えたのかもしれません。

個人的にはありがちな恋愛のようになってるといいなと思います。夢の為にリクに別れを告げられた彼女が、今度は自分の夢の為に新たな恋を捨てていたとしたら面白いなと思うからです。

 

さて。

 

長々と書いてきた僕の脳内の物語もいよいよ佳境です。

 

『失いたくないから』で始まって『君の名は希望』と『やさしさとは』を経て『あの日僕は咄嗟に嘘をついた』で終わる彼の人生(物語)の中の主役は常に『君』です。『僕』は最初から最後までずっと『君』が大好きで、頭の中は君でいっぱいです。

 

一方、『やさしさとは』で恋が終わって『立ち直り中』から『気づいたら片想い』へと流れていく彼女の人生(物語)の中には『僕』は一切出てきません。

 

この2人の関係って、何かに似てると思いませんか?

僕は君を好きで自分の人生の主役に置いているのに、君の人生の中に僕は登場すらしない。

 

僕は、これってまるで『オタク』と『アイドル』の関係みたいだなと思います。

自分の好きなアイドルが、オタクの代わりに『僕』の代弁者として僕の想いを、物語を歌ってくれるから、乃木坂の楽曲は時として身に沁みて心に響くのかもしれないなと、そんな風に思いました(締め方が辛辣すぎる人)

 

以上で僕の創作した『僕』と『君』の物語はおしまいになります。なんとなく脳内にずっとあった物語をなんとか頑張って文章にしてみました。拙い文章で伝わりにくい箇所も多いですが、少しでも面白いなと思って頂けたら幸いです。

ここまでお付き合いして下さった方、長々と読んでくださりありがとうございました。